こんにちは。テキサス・インスツルメンツのプレシジョン・ラボの 絶縁ビデオ・シリーズです。 このビデオでは、沿面距離と 空間距離の基礎、 アプリケーションに適した沿面距離と 空間距離を計算する際の設計の検討事項について取り上げます。 詳細については、TIのサイトにアクセスし、 Analog Applications Journalをご覧ください。 強化絶縁型アイソレータは 基本的なアイソレータを2個直列接続した場合と同等の 優れた絶縁機能を備えたデバイスです。 強化絶縁型アイソレータは、単独で 高電圧に対する十分な電気的安全性を確保できると 認識されています。 強化絶縁型アイソレータのデータシートには必ず、 その製品が準拠している安全関連認証の 一覧表が掲載されています。 基本絶縁型と強化絶縁型のいずれの認証も、 最低要件として、最小印加電圧試験や 沿面距離と空間距離を規定しています。 沿面距離と空間距離とは何でしょうか。どのような違いがあるのでしょうか。 沿面距離は、 2つの導電性部分間の最短距離で、 個体絶縁物の表面に沿って測定されます。 最短距離は通常、 この図で示すように、パッケージ本体の端に沿って測定します。 空間距離は 2つの導電性部分間の空間の最短距離で、 通常、右の図で示す方法で測定します。 沿面距離と空間距離は アプリケーションごとにシステム・レベルの規格要件によって決定される 距離要件です。 こうした要件に影響を及ぼすのは、 動作環境と印加動作電圧という2つの主な要素です。 まず、動作環境について説明します。 アプリケーションごとに沿面距離と空間距離の要件を評価する場合、 アイソレータの動作環境、特に 環境汚染度と標高を考慮する必要があります。 なぜでしょうか。 これら2つの要素は IEC60664-1に基づき、沿面距離と空間距離の最小要件に 直接影響を及ぼします。 煙、金属粒子、塩分を含む霧状の海水などの汚染物質が存在する 汚染のひどい環境で継続的に動作する アイソレータの場合、 汚染度が高くなります。 アイソレータが使用されているこのような動作環境の例として、 太陽光発電、風力発電、 eメーターなどが挙げられます。 その理由として、汚染度の高い環境は パッケージ表面の劣化を招き、 アイソレータを貫通する導電路を作り出す可能性があるからです。 この現象はトラッキングと呼ばれています。 沿面距離を長くしたアイソレータや、 CTIと呼ばれる比較トラッキング指数の大きいアイソレータを 選ぶことによって、このトラッキングを 最小に抑えることができます、 CTIの大きい材料は、導電路の形成に対する耐性がより高くなります。 高品質のパッケージ・モールド化合物を使用しており、 ある沿面距離と動作電圧で、番号の小さい材料グループ に属します。 各デバイスのCTIはデータシートに記載されており、 仕様のセクションで明確に規定されています。 最小沿面距離に関する表には、 動作電圧、 汚染度、アイソレータのパッケージ・モールド化合物の材料グループに応じた、 強化絶縁を実現するための沿面距離に関する要件が記載されています。 IEC60664-1によると、沿面距離の要件は、 動作電圧と汚染度に応じて高くなります。 ただし、 CTIが大きく、番号の小さい材料グループを選択することにより、 沿面距離の要件を下げることができます。 新しいアイソレータは最高品質のモールド化合物、つまりCTI材料グループ1を 使用しており、ワイド・パッケージで供給されています。 こうしたアイソレータはPCB製造時に追加的な作業を必要とせずに、 高い標高向けの設計や高い汚染度への耐性を 可能にします。 表1が示しているのは、 動作電圧、汚染度、 アイソレータの パッケージ・モールド化合物の材料グループに応じた、 強化絶縁を実現するための沿面距離と他の要因の関係を示す要件です。 汚染度、動作電圧、材料 グループに加えて、標高も 考慮に入れる必要があります。 標高が海抜2,000メートルから5,000メートルの場合、 気圧は大幅に低下します。 そのため、サージ電圧や 一時的な過電圧などのピーク電圧によって、 アイソレータの複数のピンの間でアーク放電が発生しやすくなります。 このような高い標高で動作する機器の場合、 複数のピンの間の間隔を広くあける必要があります。 表2に示す倍率は、 IEC60664-1に基づいてアーク放電を防止するために、 標高が高い場合に空間距離が満たす必要のある係数です。 例えば、動作電圧が 800V RMS、汚染度が2、 材料グループが1の場合、最小沿面距離の 要件は、IECの仕様に基づき、8ミリメートルになります。 これと同じアプリケーションを 海抜5,000メートルの標高で使用する場合、最小沿面距離 は、1.48の係数をかけて大きな値になります。 従来は、プリント基板に絶縁ポリマーや他の材料を堆積させる 絶縁保護コーティングまたはポッティングにより、 アイソレータ周囲の汚染度を低減していました。 この方法で沿面距離と空間距離の要件を軽減できます。 ただし、こうした方法はコストの増加、信頼性の低下、 PCB製造時の追加の作業を伴います。 一方、ワイド・アイソレータを製造する際に高品質のモールド 化合物を使用すると、絶縁保護コーティングやポッティングが不要になり、 PCBの設計の簡素化と 製造責任の向上を実現することができます。 では、まとめに入ります。 沿面距離と空間距離の要件を計算する際には 次の項目を検討します。 まず、強化絶縁型と基本絶縁型のどちらを使用するのか、 絶縁カテゴリを把握します。 次に、アプリケーションに必要な 絶縁動作電圧を把握します。 第3に動作 環境が1から4のどの汚染度に該当するかを特定します。 第4に、アプリケーションの動作環境の 最大の標高規定値を特定します。 第5に、使用するデジタル・アイソレータの材料グループ・カテゴリを把握します。 グループ・カテゴリは、 メーカーのデータシートに記載されています。 最後に、設計する最終製品に求められる システムの特別な検討事項を特定します。 デジタル絶縁の基礎シリーズ、沿面距離と空間距離の概要に関するビデオは 以上です。 ぜひクイズに挑戦して、このビデオの理解度を確認してみてください。